真言立川流の秘法
論文執筆のまえには、それに関する資料を自力で徹底的に収集する必要があります。
これは学術活動をおこなう上の基本中の基本で、私も大学の資料調査法の講義で学生にくり返し強調しているところです。
しかし、このやり方にこだわりすぎると、ちょっとした論文に取り組むときにも、膨大な資料が必要となり、論文ごとに文献カードを作成をしたり、それを持って図書館通いをしたり、あるいは他大学に資料の請求をしたり。。。と、かえって身動きがとれなくなり、いつまでたっても論文の執筆に取りかかれなくなったりします。
また、この資料あつめはときとして思いもかけぬ、結果をもたらすこともあります。
最近、平安時代後期に勃興しその後弾圧された、真言立川流(しんごんたちかわりゅう)に興味を持った私。
とりあえず、どのような文献があるのか、例のごとく、まずは資料あつめからと、チベット密教の考え方にも通じ、陰陽道(おんみょうどう)とも関係のある真言宗の一派についての文献をあつめはじめました。
すると、関西大学、そうでなければ、国会図書館か、手近な都内では立川市立図書館にしかない、貴重な書籍があることが分かったのです。しかも、日本の古本屋のサイトでは、高いものでは6000円の値段がついています。
高価なものは、価値があるに違いない。しかも最近の本なのにあまり図書館に入っていないようである。
本の副題にちょっと不安があったのですが、これはとりあえず入手しておこう。そう判断しました。
そこで購入したのが『真言立川流の秘法』。
副題は「密教セックス入門」。
送られてきた封書を開封して「む?」(画像はクリックすると、拡大します)
ページをめくっていって、第一章を読みはじめて、「……、やっぱり!」
第三章に絵入りで紹介されている「歓喜体位法」にいたっては、「あいたたた。。。」
立川流が性的な秘儀に重きを置いていることは知っていたのですが、仏教の経典や密教の考え方についての言及はあるとはいえ、完全にやられました。
要するに、この本は、真言立川流版(?)、性愛術の指南書だったのです。
興味のある方も(きっとたくさん)いらっしゃることと思います。せっかくですので、第一章のはじめを抜粋しておきます。私は笑わずにはいられませんでした。
アレを拝もう あなたの肉体は、誰のものでもない。あなた自身のものだ。まず、自分自身の肉体の一点をながめよう。それは鏡にうつる顔ではない。肉体の中心にある、もっとも肉体的な一点、つまり、性器である。
あなたは、自分の尊い性器をながめることから、新しい人生が開ける。活気あふれた人生とは、日々新たに自己を誕生させることであり、性器はその自己を生み出すところ。人生は性器から始まるといっても過言ではない。性器をながめるのは、自分の人生を見つめることではないだろうか。
今のように手軽に動画が見られなかった時代。この種の本は、必要な人にとっては、たしかに貴重書だったのかもしれません。それから、性愛術の歴史に興味のある人にとっても、重要な本だと思います。
しかし、真言立川流の研究書としては、ちょっと……。かと言って、古本屋に売りに行くのも恥ずかしいので、思い切って断裁・スキャンして、貴重な資料を保存しておくことにしました。
ちなみに、この本の前の所有者は、かなりの勉強家だったらしく、線がところどころに引いてありました。しかも、赤と青の2色を使い分けて。そうまでして、何を研究なさったのでしょうか。 珍書であることは間違いありません!
最後に、著者・歌川大雅(うたがわたいが)について掲載されていた略歴を記しておきます。
1917年、東京に生まれる。
特に記すべき学歴なし。真の勉学は独学にありと信じ、「心眼を開く」ことをそのテーマにしている。
真言宗の寺で得度を受けて、法名「戒玉」となったが、生得の求道自由人である。
『密教秘法』『密教神秘術』『密教錬金術』『密教占命術』など左道密教関係の著書あり。読者から広く支持される。
宗教哲学に造形深く、絵画をよくする。
本書のカバー・本文の絵は著者自身のものである。









