へるめす通信4
いたずら者のトリックスターには、夜のイメージがまといつく。
人目を忍ぶいたずらには、太陽神ヘリオスが大地の下へと隠れ込む夜こそがふさわしい。だから、彼の真に活躍する場所は、夜の闇の中である。
夜が来た。
ヘルメスは真っ先に神々の山へ向かった。目指すは、その山で草を食べている牛たちである。
この牛たちは、そもそもがアポロンの持ち物であった。ところが、ヘルメスにはそんなこと、おかまいなしである。
彼は、この牛の中から、まずは50頭の牝牛を取り分けた。そして、その牝牛たちを後ろ向きに歩かせながら、アルペイオスの河へと追い立てる。そこで、火をおこす。
さらに、その中の2頭の牛を引きずり出し、地面に投げ倒し、皮を剥ぎ、背骨を差し貫いた。そして、切り取った肉を火にかざし焼いたのである。
だが、ヘルメスは、この肉を自分が食べるために焼いたのではなかった。
もちろん、焼いた肉のあまりの香しさに、一瞬、食べたい誘惑にかられることもあった。が、そこはぐっと我慢して、彼は肉をオリュンポスに住む神々に捧げたのである。
夜中かかって一仕事終えたヘルメスは、家に戻った。そして何事もなかったかのように、まるで「僕はいたいけで無垢な赤子なので何も知らないよ」といわんばかりに、揺りかごの中で丸まって眠ったふりをするのである。
そこへやってきたのが、怒りに怒ったアポロンであった。



















