へるめす通信1
♫ I will follow you 翼の生えたブーツで、
I will follow you あなたと同じ青春 走ってゆきたいの ♬
(作詞、松本隆さん 作曲、呉田軽穂こと松任谷由実さん)
これは、松田聖子嬢の代表曲『赤いスイートピー』の二番の歌詞である。この歌について、たわいないけれども、忘れられない思い出がある。
かつて、(この私にもあった)中学校時代でのこと。同級生の女の子と、我らがアイドル聖子ちゃんの新曲を口ずさみながら、学校の廊下を歩いていた。
なんたって大ファンなものだから、二人ともあっという間に歌詞を全部覚えてしまっているのである。
その時、ふと彼女が「翼の生えたブーツだと、走りにくいと思わない?」と尋ねたのである。
その質問になんと答えたか、肝心の自分の返答は、すっかり忘れてしまっているのだが、彼女のこの質問だけは、なぜだかずーっと記憶に残っている。
たぶん、私は「翼の生えたブーツ」なるものがあれば、かわいいから是非とも欲しいなと思っていたので、反応の違いにびっくりしたからだと思う。
その後、羽根飾りのついたブーツ、そしてできれば茶色じゃなくて、翼にふさわしく白いやつがないか、近所の靴屋で探した記憶もある。
ところで、大人になってから、私は「翼の生えたブーツ」の正体を知ることになる。
実は、これ、ギリシア神話に登場するヘルメスが履いているものであった。正確に言うと、ヘルメスが履いているのは、翼の生えたサンダルなのであるが。
驚いたのは、このヘルメス、女性ではなくて、うら若き男性の神なのだ。男性の割に、おしゃれなものを履いているじゃないか! ヘルメスよ。
けれども、ヘルメスは、おしゃれのために、これを履いているわけではなかった。
彼のいでたちといえば、
手には黄金の杖・ケーリューケイオン。
竪琴を弾いて歌を歌い、
翼の生えたサンダル・タラリアで、遠いところをひとっ飛び。
彼は、神々のメッセージを伝える役を果たしているのだった。
(壷絵は、Art and Myth in Ancient Greeceより。壺絵をクリックすると拡大します。)
「ねえ、ねえ、このこと知ってた!?」と、同級生の彼女に言ってみたいなあと思うのである。
でも、今の彼女はおそらく、そんなことをつぶやいたことすら、忘れてしまっているに違いない。
そして私は、彼女が今どこに住んでいるのか、どんな人と結婚しているのか(あるいはいないのか)、どんな生活を送っているのか、知ることもない。ヘルメスがここにいたら、彼女の様子を見てきてもらうのに。
そして、あれから、あなたはあなた自身の「翼の生えたブーツ」を見つけた?
そう、聞いてきてもらいたいのです。
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