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2005/11/22

へるめす通信15

 —(ジョルジュの孫)まあ、見方によっちゃ、悪ガキだよねぇ。
 だけど、福沢は、そういう当時の人たちが信じていた神罰みたいなものは、実は嘘っぱちなんだということを、子供ながらに感じていたわけ。そして感じていただけじゃなくて、実際にそれを自ら証明したってわけ。
 それって、単なる悪ガキじゃ、できないことでしょ?

 —(村人A)まあ、それはそうですね。

 —(ジョルジュの孫)それにね、福沢が生まれたのは、江戸時代よ、江戸時代。みんな、ちょんまげ結って、着物を着てた時代よ。今だって、トイレでお札を踏むなんて、できる人、そんなにいないと思うのに、ちょんまげ結ってた時代にこんなことするって、普通の人じゃないってことよ。
 もっとすごいのは、神様のバチなんて、そもそもないってことの証明が、これだけじゃないってこと。そのお札踏み事件から、1、2年経った後にも、性懲りもなく似たようなことをやってるのね。

 —(村人A)はあー、今度は何をしたんですか? 福沢少年は。

 —(ジョルジュの孫)今度はね、自分が養子になっていた叔父さんの家のお稲荷様の社(やしろ)に何が入ってるのかなーと思って、そおっと開けて見たらしいのね。そしたら、中に石が入ってたんだって。つまり、みんな、石を拝んでいたわけよ。

 —(村人A)なるほど、フェティシズムってやつですね。

 —(ジョルジュの孫)そうそう。それでね、福沢はなんと、そのご神体の石を捨てちゃって、代わりの石を拾って入れたんだって。

 —(村人A)ひょえー!

 —(ジョルジュの孫)それからね、隣の屋敷のお稲荷様を開けて見たら、今度はそこに木の札が入ってたらしい。それも捨てちゃったんだって。

 —(村人A)やっちゃったぁ。。。

 —(ジョルジュの孫) 冗談じゃないんだから。これ、ちゃーんと『福翁自伝』に書いてあるんだから。
 それで、平気な顔して、すましていたら、まもなく初午(はつうま)になったってんで、幟(のぼり)を立てたり、太鼓を叩いたり、御神酒(おみき)をあげたりして、みんな、お祭りしているわけ。実際にはご神体そのものじゃないのにね。だけど、それを知らないで、みんな一所懸命にお祭りしている。
 だから、福沢は笑いたくなっちゃったらしい。
「馬鹿め、乃公(おれ)の入れて置いた石に御神酒を上げて拝んでるとは面白い」、
って思ったみたいよ。

 —(村人A)ぷぷっ、やっぱ、悪いヤツですよ、福沢は。一万円札に刷られているのは、間違いじゃないかって気がしてきましたよ。
 ……あれ? どっかにいましたね、似たようなヤツが。
 そうそう、ヘルメスみたい!

 —(ジョルジュの孫)あ、似てるかもね!! 確かに福沢は、ある意味で明治日本のトリックスターかもしれないなぁ。
 でもね、やっぱ、お札に刷られているのは、間違いじゃないんだよねー。いろいろすごいのよ、諭吉先生は。

 —(村人A)偶然の一致ですかね。「おふだ」と「おさつ」って同じ字ですね。お札(ふだ)を踏んでお札(さつ)になった。諭吉、呪われたか?!

 —(ジョルジュの孫)その、どこからどう見ても救いようのない駄洒落を言うヤツは、だじゃれ? なんちゃって。

 —(村人A)……。却下!

 —(ジョルジュの孫)ごほっ。えーっとまあ、それはさておいて、こんなふうに、福沢は根本的に疑っていたようだけど、木とか石のような単なるモノに特別な価値を見出して信仰するということ、つまりフェティシズムは、古今東西を問わず、いろいろなところにあるわけ。

 —(村人A)じゃあ、フェティシズムって、あの有名な、ハイヒール・フェチとか、ブラジャー・フェチとは、全くの別物…?

 —(ジョルジュの孫)いや、いや、それがそう簡単にいかないのが、フェティシズムなわけ。ある人は石とか木を信仰の対象にしているけれど、別の人はそれがハイヒールとか、ブラジャーとか、女性のふくらはぎになっているということよ。

 —(村人A)じゃ、そっちのフェチって何なんですか?

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