へるめす通信20
—(村人A)エレクトラ・コンプレックス?
何ですか、それ。
—(ジョルジュの孫)エレクトラっていうのは、古代ギリシアのミュケーナイの王アガメムノンと、その妃クリュタイムネストラの間にできた娘の名前よ。
王の妃クリュタイムネストラが情夫とともに、夫であるアガメムノンを殺しちゃったのね。そこで、エレクトラは怒って、弟のオレステスと力を合わせて、愛する父親の仇をとるという話なのよ。
つまり、エレクトラ・コンプレックスっていうのは、母親に敵意を持ち、父親に愛情を感じる女の子の無意識的な欲望のことをいうわけ。
—(村人A)なるほど。
—(ジョルジュの孫)それから、カイン・コンプレックスってのも、あるの。
—(村人A)えっ、まだ? まだ、あるんですか!
—(ジョルジュの孫)そうよ。
カインてのはね、『旧約聖書』の「創世記」に登場するアダムとエバの長男の名前ね。弟はアベルっていうの。
アダムとエバがエデンの園を追放されちゃって、カインとアベルっていう2人の子供をつくったの。カインは農夫になり、アベルは羊飼いになるわけ。
それで、2人はそれぞれ自分のところで採れたものを、神様にお供えするのね。
そしたら、神はアベルとアベルのお供え物だけを気に入り、カインのには目もくれなかったわけ。
—(村人A)うわっ。そりゃ、ケンカの元ですよ。神様、ひでえな。
—(ジョルジュの孫) 「創世記」には、アベルはよく肥えた羊を供えたということが書いてあるのね。だけど、なんで神様がカインのものを顧みなかったのか、その理由は書いていないわけ。
だから、あなたみたいな感想が出てきても、おかしくないかもしれない。確かに、これだけだと、神様ってすごーく意地悪のように思えるしね。
—(村人A)でしょう?
—(ジョルジュの孫)だけど、こう考えることもできるの。つまり、神がアベルの方を気に入ったのは、アベルのお供えものの方が、神様への敬意をよく表していたからじゃないか、って。
例えば、ちょっと時代は下るけど、『新約聖書』の「マタイによる福音書」には、「義人アベル(righteous Abel)」って書いてあるの。つまり、アベルは「高潔の人、義の人」って解釈されてるわけ。
それから、同じ『新約聖書』の「ヘブル人への手紙」には、もっとはっきり書かれているのね。
「信仰によって、アベルはカインよりもまさったいけにえを神にささげ、信仰によって義なる者と認められた。神が、彼の供え物をよしとされたからである。」
—(村人A)うーん。……つまり、なにがしかの理由があって、神はカインよりもアベルを評価したってわけですね。
で?



















