へるめす通信22
—(村人A)ふーん、そんなもんですかね。
しかし、アベルって土の中から叫ぶなんて、ゾンビみたいなやつですね。
—(ジョルジュの孫)ゾンビって、あなたね、アベルは『新約聖書』では「義人」だっつーこと、お忘れなく。
それでまあ、結局、カインはアベル殺害の罪により、この土地を追放されちゃって、エデンの東にあるノドの地に行かざるを得なくなってしまうの。しかも、お前の耕す土地は実は結ばないとまで、神様から言われて。
—(村人A)ふうん、なんだか、少しだけカインがかわいそうな気がします。
—(ジョルジュの孫)そう、そのカインの「かわいそう」なところ。そこに着目して、作られたのが、『エデンの東』という作品なの。
映画では、カインと神様との関係を中心に描いていると言っていいと思う。つまり、ジェームス・ディーンが演じた主人公キャルは、聖書でいうところのカインにあたっていて、聖書の中の神様にあたるのが、キャルの父親であるアダムなの。
キャル(つまり聖書のカイン)が、いかに父親のアダム(聖書の神)の愛を欲していたか。これが映画『エデンの東』のテーマの一つよ。
ちなみに、スタインベックが書いた原作の方では、この父親のアダムの子供時代からの出来事が描かれていて、映画よりもかなり壮大な話になっているのね。
—(村人A)あっしも、『エデンの東』、見てみますよ。
—(ジョルジュの孫)ジェームス・ディーンは、あなたと違って、相当かっこいいから落ち込まないように。
—(村人A)なんですか! ほんとに、いっちいち、しつこいなあ。なんで、あっしがジェームスを見て、落ち込むんですか?
—(ジョルジュの孫)あら、ジェームスなんて呼んじゃって。あなたのお友達でしたか? そりゃ、全く知りませんでした。
—(村人A)くっそー!
—(ジョルジュの孫)ま、いいわ。これくらいにしといてあげる。
とにかく、兄弟のいる人なら分かると思うけど、こんなふうに、兄弟の間で競争することがあるじゃない。それで、相手に、敵意とか嫉妬とかを感じるでしょう。
兄弟に感じる敵意や嫉妬って、他人に感じる敵意よりも、ある意味、もっと強烈で、しかも相手がいつも近くにいるから、休むひまなく、年がら年中、燃えさかっているものじゃない?
それを、カイン・コンプレックス、別名を兄弟コンプレックスというわけ。
—(村人A)そうすると、若貴兄弟も、カイン・コンプレックスを持ってるってことかな。若貴騒動って、意外に根の深い文化的な問題なんですね。
—(ジョルジュの孫)若貴の問題も、父親ないしは母親との関係で探ると面白いかもしれないね。
—(村人A)なるほどなあ。しかし、コンプレックスって、そんなにたくさんあるんだ。
—(ジョルジュの孫)そうなのよ。



















