へるめす通信23
—(ジョルジュの孫)さて、と。
こんなふうにコンプレックスってのはいろいろあるんだけど、まず理解しておく必要があるのは、コンプレックスが何で問題になるのかっていうことね。
えーっと、誰しもがそうなんだけど、昔、とくに子供の頃に、自分にとって何か強烈な経験をすることがあるでしょ?
例えば、エレクトラだったら、母親が自分の父親を殺したことを知ったとか、カインだったら、神様が弟だけを認めて、自分を認めてくれなかったとか。
—(村人A)たしかにありますね。エレクトラの場合はかなり極端だけど、カインの場合だったら、よくわかりますよ。
もちろん、あっしの場合、カインと違って、認めてくれない相手は神様みたいな偉い人(?)じゃありませんよ。だけど、カインと似たような経験を持ってますよ。
—(ジョルジュの孫)そうだよね。私もそうだし、他の人も多かれ少なかれ、そういう経験を持っていると思う。
そうするとね、そういうショックに出会った時には、人はそれに対して、忘れたい、忘れよう、忘れなくっちゃ、って思うわけ。 で、ついには、普段は思い出すこともなくなるの。
—(村人A)ふうん。まあ、それくらい辛い出来事だったってことですね。でも、忘れちゃうんだから、いいじゃないですか。
—(ジョルジュの孫)ところがどっこい、そんなにうまくはいかないのよー。だって実際には、完全に忘れることができないからなのね。その記憶って、忘れよう、忘れようと思えば思うほど、心の奥底にしまわれてしまうの。そして、普段は思い出すこともなくなって、表面上は何事もなかったような状態に戻るわけ。
—(村人A)じゃ、よかったじゃないですか。
—(ジョルジュの孫)ところが、よくないの。ある時、日常生活のささいな場面で、その隠された記憶に触れるような刺激に出会うことがあるんだから。
—(村人A)え? どんな? よくわからん。



















