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2005/12/31

へるめす通信25

 —(村人A) 余計なお世話です!! それともなんですか、あーたも、そろそろあっしの過去が気になりだしましたか。
 でもね、気をつけてください。あっしは、自分でも言うのもなんですが、こう見えても危険な男なんですよ。

 —(ジョルジュの孫)ぶぁかもん!! どこが危険なのじゃ!!

 —(村人A)「いい男は女の過去を問わない、いい女は男の未来を問わない」、ってね。

 —(ジョルジュの孫)ウルトラ馬鹿! その論理からすれば、いい女ってのは男の過去を問うてもいいってことになるじゃない。

 —(村人A)あ、しまった……。

 —(ジョルジュの孫)じゃ、あなたの過去を問うてる私は、いい女ってこと? わはは。そうだったのかぁ、それならそうと、早く言えばいいじゃない、村人Aよ。照れちゃって!

 —(村人A)いや、要するにね、あっしは、カインの気持ちが、よくわかるってことですよ。あっしも、羊の肉は苦手です。匂いがちょっと臭いんで……。

 —(ジョルジュの孫)それ! それよ。そのあなたの反応も面白いのね。
 つまり、昔に嫌な経験をした人は、場合によっては、自分で「羊の肉の匂いが臭いから、羊が嫌いなんだ」って、勝手に理屈付けをして合理化を図っているってこと。
 だけど、本当は、匂いが臭いからじゃなくて、なにがしかの嫌な記憶を思い出したくないから、嫌いになったんだってことを理解しなくちゃいけないのよ。
 だから、もしかすると、あなたが臭いから羊の肉が嫌いだっていうのも、あなたの合理化の結果なんであって、ホントは別の苦い経験があるのかもよん?

 —(村人A)うへー!! じゃ、食べ物の好き嫌いって、単なる嗜好の問題じゃない可能性があるってことですか!?

 —(ジョルジュの孫)その可能性が高いと思う。
 つまり、食べる、食べないというような、日常生活の何気ない行為においてさえ、人はかつての自分の体験に左右されてしまうことがあるのね。そして、そういう行為を生み出すものがコンプレックスなのよ。
 ちなみに、コンプレックスは邦訳すれば「複合体」って意味だから、劣等感だけがコンプレックスじゃないのね。コンプレックスは、心のさまざまな要素が寄り集まってできたものであるわけ。

 —(村人A)うーん。そうすると、ある種のコンプレックスを持っている人、この場合で言えばカインに対して、「神様に認められなくたって、他の人に認められりゃあ、いいじゃないか」とか、「世の中にはもっと悲惨な目に遭っている人がいる。だから、そんなに深刻にならないで、もっと軽く考えようや。」なんて慰めたって、当人にとっては全く意味をなさないってことになりますか?

 —(ジョルジュの孫)そうなのよね。そこが問題よ。

 —(村人A)じゃ、カインは、羊コンプレックスを解消したら、いいじゃないですか!!

—(ジョルジュの孫)いやいや、そう短絡的にはいかないのよ。今、私は羊の肉を例にとったけど、どういうものが刺激になるかは、人それぞれなの。
 だから、カインは、もしかしたら、羊じゃなくて、自分が供えた方の畑の作物が嫌いになったかもしれない。あるいはアベルが着ていた衣かもしれない。もっと別のものかもしれない。それはカインの心の奥底を探ってみて、初めてわかることなの。

 —(村人A)うーん、難しい。つまり、コンプレックスとその反応を万人向けに定式化しようとしても、ダメってことですね。

 —(ジョルジュの孫)そういうこと。こういうようなものだとしか、言えないのね。

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