へるめす通信27
—(ジョルジュの孫)それじゃ、気を取り直して、フェティシズムの話の続き、いってみよっと。
興味深いのは、カイン・コンプレックスの場合、カインはアベルとの同一化を望んでいるってことなの。 つまり、一方では、殺意を抱くほど、憎たらしく思っているのに、一方では、そいつになりたいと強く願っているってこと。
—(村人A)えー、何ですって? なんで殺したいやつと同一化したいんですか? それって、矛盾してません?
—(ジョルジュの孫)その矛盾が、人間の心のあり方だってことよ。
だってアベルだけがほめられて、自分は顧みられなかった。だから、カインは、「アベルめ、コンチクショー!!」って思ったわけでしょう。
要するに、カインは自分も神様からほめられたかったわけよ。アベルみたいになりたかったわけ。
つまり、カインがアベルに殺意を抱くということ自体、その人になりたい、その人にとって代わりたいって思っていることの現れなのよ。
—(村人A)えー!!
—(ジョルジュの孫)エレクトラ・コンプレックスも、エディプス・コンプレックスも、劣等コンプレックスも、そういう点では同じよ。
憎んでいる相手、嫉妬している相手を、殺したい、やっつけてやりたいと思う一方で、相手と同化したいという欲望から出ているってこと。
—(村人A)ぶっちゃけていえば、相手に対して、嫉妬と憧憬というような、相反する感情を持っているというわけですね。
—(ジョルジュの孫)そうそう! そういうのを、両面価値的(ambivalent)な感情というのよ。
—(村人A)なあんだ、そっかぁ。実はあっしはよく友達から、「お前のこと、殺したいほど嫌っているやつが大勢いるぞ」って言われることが多いんですよ。
そうか、そうか。みんな、あっしに憧れの感情を抱いていたってわけですね。なーんだ。知らなかったなぁ、もう! もっと早く言ってくれればいいのにねっ。
—(ジョルジュの孫)それは、ホントのホントに、あなたのことが嫌いなのかも。
よっく、見極めないと……。



















