へるめす通信32
—(ジョルジュの孫)フェティッシュを物体ととらえるから、変に感じるだけのことよ。
フェティッシュは物理的な対象にとどまらないの。概念的というか、言語的な対象物にもあてはまるわけ。
例えば、あなた、愛が大切だって思ってなぁい?
—(村人A)思ってますよ! 愛こそがすべてです!!
ビートルズの“All you need is Love”は、何を隠そう、あっしのテーマソングです!!!
—(ジョルジュの孫)…あっそ。
—(村人A)でも、それだけじゃ、あっしの全てを言い尽くしたことにはなりませんね。あっしの愛を語る上で外せない普遍的名曲といえば、エディット・ピアフの「愛の讃歌」でしょう。
♫あなた〜の燃える手で、あたしを抱きしめて〜♪
いくらでも、抱いてあげましょう!!! この私が!
—(ジョルジュの孫)あのね、つまりね、そういうんじゃなくてね、フェティッシュってのは愛とか……。
—(村人A)ちょっと待ってください!! 極めつけは、これですよ。宝塚歌劇「ベルサイユのばら」の中の逸品「愛あればこそ」。
♬愛、それは甘くー
愛、それは強く
愛、それは貴く
愛、それは気高くゥ〜 ♪
これですよ、これ。これが、あっしの愛ですよ! 他のことばはいりません。
♪愛、それは悲しく
愛、それは切なく
愛、それは苦しく
愛、それははかなく
愛、愛、あーーーいぃぃぃぃ〜
—(ジョルジュの孫)ようやくわかった。。。ヅカか! ヅカ・ファンだったか、おぬしは。。。だから、そんなにオーバーアクションなのね……。ふーーーー。
—(村人A)あーた! ヅカ、ヅカって失礼ですよ。ヅカをなめちゃ、いけませんよ。かっこいいんだから、一回見てくださいよ。溜息なんか、ついてないでぇ!
—(ジョルジュの孫)……あのね、話がせっかく元に戻ったんだからね、チャチャ入れないの!
つまり、あんたの愛とか正義とか平和とか誠実とか、そういった、概念的なものも、物神になるってこと。
そういうものに、恐怖と崇拝というような、アンビバレントな感情を持ちながらね。
—(村人A)確かに、愛は怖いものですよ。愛は人を狂わせますしね。あっしもよく女性を狂わせているんですよ、あちこちで。
そうすると、あっしはさしずめ、「さまよう愛のコンプレックス」ってやつかな?
—(ジョルジュの孫)(巻き舌で)たわけたことぬかすと、いいかげん承知せんぞ、こらぁ!!
—(村人A)ううっ!?
……今、とってもコワーイ人が通り過ぎたみたい。。
—(ジョルジュの孫)(はっと我に返り、今度はにっこり笑って)ちがうのよー、村人A君。よっく、人の話、聞きましょうねぇ。
—(村人A)あ、やさしいおばさ、こほん、お姉さんが戻ったぁ! よかったあ。
—(ジョルジュの孫)あのねぇ、意識してたら、それはコンプレックスにならんのよー。コンプレックスっていうのは、意識していないところで、行動その他を制限してしまったりするものなの。
あなたの言う「さまよう愛のコンプレックス」は、コンプレックスという隠れ蓑を被せてはいるけど、真っ赤な太陽、じゃなくて、真っ赤なニセモノよ!
—(村人A)あっ、「真っ赤な太陽」! ひばりちゃんの名曲ですよね。
♫真っ赤に燃えた太陽だから、真夏の海は恋の季節なのォ♪
—(ジョルジュの孫)もう、いいかげんにしろぃ!! 破門じゃ〜〜〜!
—(村人A)もしもーし、あっしは弟子入りなんぞ、しちゃいませんが……?



















