舞台『億萬長者夫人』は一見の価値あり
前にも書きましたが、昨年から今年にかけて、かなりの数の映画と舞台を見ています。
昨年は映画づけの一年と言ってもよく、一年で300本以上見、見て良かったと思える映画にたくさん出会いました。
その中でも比較的楽しい映画、感動する映画を中心に、その一部をこのブログ上でも紹介しています。
一方、昨年の後半から山口昌男先生とご一緒に舞台を見る機会が増え、自分の趣味以外の舞台を鑑賞することが多くなりました。
先生のおかげかもしれませんが、今年は本当に、終演後に「良い舞台を見たなー」とつくづく感じるのです。
つい最近、三百人劇場で舞台『億萬長者夫人』を見て(これは山口先生とご一緒ではなかったのですが)、またもや「この舞台はいい舞台だなあ」と感じ入りました。
劇団昴の役者さんたちは演技が上手で、いつも大いに活躍していただきたいなあと思うほど。
その中でも、今回はなんといっても主役の一柳みるさんがすごい。億萬長者にして美人、しかも空手四段、けれども口が減らないという役どころを演じきっています。
億萬長者夫人の夫役の田中正彦さんも、いつも見る役柄と全然違う雰囲気でびっくり。私はご本人をある劇場のロビーで間近にお見かけしたことがあるのですが、普段の田中さんはとてつもなくかっこよかったのに、この舞台では。。。。。ほんとに役者さんなんだなあ、と思いました。
それから、やはり脚本がすさまじい。福田恆存氏の脚本は、あいまいな箇所でストップせずに、現代において、英雄のような生き方を徹底するとどうなるかという問題を、ニーチェとD.H.ロレンスを下敷きにして、えぐり出している。そんなことを私は考えました。ただし、この戯曲には、「バーナード・ショーによる」という副題がついているのですが。
つまり、大衆と大衆社会に対する批判の戯曲で、ブレヒトの戯曲とは対極に位置するものと思います。
また、福田氏の戯曲は、言葉と言葉を闘わせることによって、ある状況が孕んでいる問題性を浮き彫りにします。その状況に右往左往してしまう登場人物の様子があまりにも滑稽なので、観客は、そこに一種の喜劇性を感じるという仕掛けになっています。
この手法は、私が以前に見た筒井康隆氏の戯曲『三月ウサギ』に通じているという感想を持ちました。
ちなみに、この『三月ウサギ』の初演も劇団昴(演出:樋口昌弘氏)で、主人公は『躍る大捜査線』で有名な北村総一朗氏だったようです。
この戯曲を見ると、「筒井康隆って、とてつもなくすごい才能だ!」と納得してしまいます。また『三月ウサギ』の舞台を見ると、榎本健一(エノケン)が昔歌った「月光値千金」の曲が頭を離れなくなります。ああ、この時の舞台、見たかったなあ。。。
『億萬長者夫人』では、観客一人一人が答えを迫られているように感じるのですが、福田氏は男性ではなく、美貌の億萬長者夫人という「女性」を英雄的な主人公に描いているところが面白いです。
舞台は7月2日まで続いていますので、興味のある方はご覧ください。
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