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2007/07/02

『ハイスクール・ミュージカル』の射程

昨日、ちまたで話題の
『ハイスクール・ミュージカル』を
DVDで見たところ、
あまりにも現代の若者の問題を反映しているので、
おもしろいと思いました。

ご存じの方も多いと思いますが、
これはアメリカのディズニー・チャンネルで放送され、
大ヒットしたテレビ番組をDVD化したものです。

日本でも、今年のお正月にNHK総合で
放送されたとのこと。

それから、これは東京の青山劇場で舞台化もされていて、
つい先日、終演を迎えたようです。

ところで、このドラマのテーマですが、
それを要約すれば、
周囲から役割を担わされた自己、すなわち<負荷的な自己>と、
役割からの自由を目指す<選択的な自己>との間の軋轢、
ということになろうかと思います。

さて、話の内容ですが、簡単に述べておきますと、

主人公の男子高校生トロイは、
バスケット部のキャプテン。

しかも彼の父親はバスケット部のコーチで、
かつてチームを優勝に導いた猛者。

そんな父親を持つトロイは、
将来はプロ選手として活躍をするのでは?
と友達から期待されているほど、
バスケ部には、なくてはならない人物です。

そして、もう一人の主人公である
女子高校生のガブリエラは、
数学と理科で新聞に名前が載るくらいの優等生。

トロイが通う高校に転校してくるとすぐに、
数学と理科の学生コンテストへ一緒に参加しようと
女友達から誘われます。

ところが、この二人は、そんな自分の従来のイメージを
前々から負担に思っていたらしいのです。

実は彼らが本当に欲していたのは、
歌を歌うこと。

周囲から期待されている自分のイメージを
ぶちこわすことになりはしないかと逡巡しながらも、
学校で開催されるミュージカルに出たいと思い、
二人はそのオーディションを
受けようとするわけです。

しかし、
歌を歌うなんてことは、
まったく彼らのイメージに合わない。

むしろ、友達にとっては、自分たちが優勝しようと思っている
バスケの試合やコンテストの妨げになるので、
はっきりいえば、迷惑である。

そこで、まわりの友達は、
二人のオーディションを邪魔しようとする……という、
コメディなのです。

つまり、主人公の二人は、

周囲が期待する自分のイメージに合うように
これまで生き続けてきたわけです。

しかも、そういう自分を生き続けることが、
彼らにとっても、ある程度の充足感をもたらしてきました。

けれども、そのような自分の位置づけに、
どこか物足らなさを覚え、彼らはなんとかして、
そこから抜け出ようとするわけです。
しかしその試みはなかなかうまくいきません。

別の言葉で言うと、

いったん自分のイメージが形成されてしまうと、
人は、親兄弟や友人やサークル、職場やブログや
ミクシィの仲間など、自分の周囲の役割期待に応答しようとして、
固定化された役割をあえて演じ続け、
なかなかそこから逸脱することができない

ということなのです。

最後は喜劇の常套手段であるハッピーエンドとなりますので、
このドラマを単純だと見なす人もいるかもしれませんが、
私たちが生きている社会の演劇的な構造というものを、
うまく表現していると思います。

さらに言うと、このミュージカルに、
現代の他人指向的な若者の姿を見て取ることも可能でしょう。
(ちなみに、この他人指向の問題は、このブログ内の
「エッセイ」のコーナーでも触れたことがあります。)

こんなふうに書くと、
けっこう堅い内容なのかと思うかもしれませんが、
作品自体は非常に明るく、楽しいものに仕上がっています。
音楽とダンスもなかなかで、見ていて、思わず踊りだしそうになりました。

しかも、日本の若者の現在ともつながっていますので、
ご興味のある方は、一度
この作品をご覧になってみてください。


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