へるめす通信41
—(ジョルジュの孫)てなことで、むちゃくちゃ昔のことで、だァれも覚えちゃいないけど、話を元に戻すとね。ヘルメスがゼウスの頭に誓いを立てるっていう行為一つとっても、深いふかーい意味が隠されてるというわけよ。
そもそも人はなぜ誓いなんか立てるのかって話にもなってくるしね。それに現代でも誓いは果たして有効なのかっていうことにもなるし。1コのことを追究しようとすると、いろんなことに突き当たって、たいへんなの。
—(村人A)はァ、そうだすかぁ。
—(ジョルジュの孫)そうだす。
—(村人A)要するに、あーたも、のんきな顔して、けっこうたいへんなことをやっている、と。
—(ジョルジュの孫)「のんきな顔」ってのは余計だけど、よくわかってくれたじゃないの。村人Aよ。
—(村人A)いや、まあ、ちょっと言ってみただけですよ。あーたにもこの辺でねぎらいの言葉をかけた方がいいかと思って。ちょっとしたオトナの気遣いってやつですよ。
—(ジョルジュの孫)ほんとに、小憎らしいやつ! だけどね、 ちらっと小耳にはさんだ話だと、あんたのファンがいるらしいわよ。しかも、かわいい女の子。
—(村人A)ええっ!? なんだってそんな重要な話を今のいままで教えてくんなかったんですかぁ! いや、ほんと、早く教えてくれたら、サインの一つでも、ウィンクの一つでも、キッスの一つでも、サービスしたのに〜!
いやね、あっしはほんとに罪作りな男なんですよー。「お嬢さん、あっしに惚れるとケガしますぜ」。なんちって。だけど、やっぱ、あっしのキケンな香りってのは、わかる人にはわかっちゃうんですねー!!
いやー、目が高い、目が高いっすよ! あーたのお知り合いとは思えないほど、趣味が良い!!
—(ジョルジュの孫) (-_-;)
—(村人A)るんたった、るんたった、幸せだなぁ♪ うふふ。だけど、あっしは心が広いから、こういう幸せの絶頂の時には、他人の不幸がひどく気の毒になるんですよね。
そういえば、ヘルメスさんとやら、おとっつぁんのゼウスさんのところに、引っ立てられて行ったんですよね。眉目秀麗なアポロンさんに連れられて。
アポロンさんの牛を盗んじゃって、盗んだろって追究されても、しらばっくれてたから、アポロンさんがマジ切れしちゃって。それでおとっつぁんのところへ連れて行かれた。確かそうでしたよね。
あっしの頭の中じゃ、♪ドナドナドーナ、ドーナ〜♪って歌が鳴り響いていますよ。かわいそうだなあ、ヘルメスさん。
—(ジョルジュの孫)いや、だって、そもそもヘルメスがアポロンの牛を「ドナドナ」したんだからさ、今度は自分がアポロンから「逆ドナドナ」されたって文句は言えないんじゃないの?
—(村人A)……だから、あーたは極悪非道人だって言うんですよ。ヘルメスのこと、かわいそうだと思わないんですかい?
—(ジョルジュの孫)どうとでも言ってくれい! そもそもはヘルメスが悪いの!
—(村人A)だけどさ、だけどさ、ヘルメスってやつは、ゼウスのおとっつぁんの頭に向かって、俺はウソをついていないって誓いを立てているわけですよ。
今までのあーたの話からすると、人は誓いを立てている対象に対して、恐怖と羨望というアンビバレントな感情を持っていて、なおかつ、それはその人にとって「神」的な存在だっていうじゃないですか。
つまりね、ヘルメスさんは、恐れと憧れというとてつもない感情を持っているお父上ゼウスさんのところに、引っ立てられて行くわけですよ? 悪さしてるのがわかってて、わざわざ叱られに行くのだって、ある意味、かわいそうじゃないですか。しかもお叱りを受ける相手は、自分が恐れと羨望を持っている、自分が一番気にしてる「神」的な人物ですよ?
あっしはイヤだなあ、そんなの。すんごく、かわいそう! あっしの幸せを分けてあげたい!!
—(ジョルジュの孫)……はー、まあ確かにね。あなた、意外に繊細なのね。
—(村人A)そう、そこなんですよ。あっしが問題にしたいのは。たぶん、あっしのたくさんある魅力の一つはそこなんですよ。あっしの魅力ってのは、自ずから光り輝いてしまうわけですよ。だけど、あーたは本当に鈍感っつーか、何て言うか……。
—(ジョルジュの孫)悪かったわね!
—(村人A)しっかし、ヘルメスさんはゼウスの前で、どういう態度を取るんでしょうね。やっぱ、しらばっくれるのかな? すんごく興味あるなぁ〜。
—(ジョルジュの孫)そう。それはね……。



















