自己実現のための勉強法(5)―「がーっと」語学勉強法編
今日は、自己実現のための勉強法の5回め。
当初、2、3回で終わろうと思っていたのですが、なんとなく書いていると、まだまだこんなのもあるぞー!という具合に、自分の中の引き出しから、ぽろぽろとアイディアが出てくるようになりました。もう少し続く予定ですので、おつきあいいただければと思います。
さて、前回、締め切り日にまでに、興味を持った人物の本をまとめて「がーっと読む」という山口昌男先生の読書法を御紹介したのですが、今日は、外国語勉強法。
実は、山口先生の外国語学習法も、この「がーっと読み」と同じなのです。
つまり、何月何日に、どこかの国に行くということになったら、その時までにその国の言葉をがーっと勉強するというわけです。ですから、程度の差はあると思いますが、訪れた国の数だけ、外国語を学ぶということになるのです。
そして、山口先生の恐ろしいのは、外国に行ったら、外国の古本屋に行き、単語などほとんどわからないという段階でも、本を買ってきてしまう。どうも、本の方から、「おいで、おいで
」をしてくるらしいのですね。
ちなみに、山口先生の奥様・ふさ子夫人のお話によれば、買ってきた当初は読めなかったはずのその本に、いつの間にか、線が引かれているとのこと。
おおっ! ヾ(℃゜)々
要するに、これは読まなければならないと思った本は、それがどんな外国語で書かれていようとも、とにかく読む!
その時、私たちは普通、文法などを完璧に勉強してから、本を読むべきだと思ってしまうわけですが、どうもそうではないようです。
これについては、エンゲルスが書いている自身の外国語学習法が参考になるかもしれません。
エンゲルスのやり方は、文法は勉強せず、その外国語で書かれた古典作家の本を、辞書を引きながら読んでいく、というもの。ただし、名詞活用と動詞活用と代名詞は一応勉強してから、という限定つきではありますが。
ですからエンゲルスは、たとえば、イタリア語はダンテなどから、スペイン語ならセルバンテスなどから、ロシア語ならプーシキンから、いきなり読み始めたといいます。
ちなみに、このエンゲルスのエピソードが載っている緒方靖夫氏の著書(『楽しくつきあう外国語』新日本新書)に書かれている緒方氏自身の語学勉強法もすごいですし、この本には、元共産党委員長の不破哲三氏が6カ国語以上に通じていたなど、興味深いエピソードが満載です。
そして、この「がーっと」外国語学習法は、戦後日本を代表する知識人・清水幾太郎も、それからジャーナリスト・東谷暁氏も、そして学魔・高山宏先生も同じ。以下の本を読むと、それがわかります。
みなさん、多忙にもかかわらず、しっかりと原書を読んでいるのですね。当たり前といえば、当たり前なのですが、勉強法に党派は関係ないということでしょう。
ここで、週刊英和新聞・朝日ウイークリーの元・国際本部副本部長などをなさっていた、高橋茅香子氏の『英語となかよくなれる本』(文春文庫)の中の一節を引用します。
どうしたら英語の文章を読めるようになるんでしょうとよくたずねられるが、答えはただひとつ。ひたすら読むこと。それじゃあ身もふたもない、と思わないでほしい。これはほんとにほんとのことなのだから。大切なのは、自分の興味にしたがって、好きなものを読むことだ。(p47)
語学をものにした人たちに共通しているのは、とにかくあきらめずに、最後までなんとか読み通せ、という実践的外国語学習法のようです。
最後に、国際政治学者の猪口邦子氏が、小学生時代から実行していたという勉強法をご紹介しましょう。御尊父の仕事の関係で10歳から15歳までブラジルのサンパウロで過ごす事となった猪口氏は、そこで全ての授業が英語で進められるアメリカンスクールに、自らの希望で入る事になります。
よく、留学すればすぐに語学が出来るようになると思われているのですが、簡単な日常会話のやり取りぐらいならともかく、それ以上の語学力を身に付けようとすると、そう簡単にはいかないようです。例えば、私の教え子の中に、高校時代、アメリカに一年間交換留学で滞在した学生がいました。けれども、単に留学しただけでは語学が身につかなかったらしく、彼はいつも「英語が出来るようになりたい」と溜息をもらしながら語っていました。
さて、少女時代の猪口氏の具体的な勉強法ですが、十歳の彼女は、先ず、半年後には英語で対応できるようになるという目標を立てます。そしてその上で次のような語学学習法を猛烈に実践していきました。
まず単語帳方式で単語を覚えるところから始める。小さなノートの左側に英語を書き、右側に日本語を書く。教科書に出てくるわからない単語を片っ端から書いて単語帳をつくるのだ。
最初はほとんどすべてがわからない単語なのだから、単語帳は教科書をそのまま書き写しているようなものだった。それをつかって日本語を見ながら英語を発音する、スペルを書くということをひたすらやる。一ヶ月もするとその単語帳は一〇冊を越えた。それをいつも最初からめくり、発音し、書く。
たとえば最初にappleがあるとしたら、何回かやるうちに覚えてしまうのだが、それでも 必ず最初からすでに覚えた単語も繰り返し練習する。もう頭で覚えるのではなく、書きながら腕の筋肉に覚えさせるという感じ。1日に単語帳何冊とノルマを決めて必ず実行する。
アメリカンスクールは、スクールバスの送り迎えがあった。その道中には必ず、この単語帳を抱えて乗り、見て覚えるようにしていた。何百、何千の単語についてそれをやっていると、半年を過ぎるころから、かなりの単語が頭に入ってきた。単語がわかると、どうにか意志を通じ合わすことができる。文章ごとの暗記もよくしたので、単語を入れ替えながら話せるようになり、私もこの社会でやっていけるという自信がついた。(中略)
覚えなくてもいいような単語まで覚えるよりは、よく使われるものを覚えたほうがいいのではないかとか、一度覚えた単語まで何度も繰り返すなんて、なんと非効率的な勉強の仕方かと思われるかもしれないが、わたしは遠回りのようでも、このやり方が一番、単純明快で語学上達の秘訣のように思う。(中略)
あとは教科書の文章を何度も読む、音読する。アメリカ史や地理の教科書は何度も読み、重要なフレーズを暗記していった。何度も読むと文章ごと覚えてしまう。覚えたことはあまり考えずにすぐ言うことができる。当たり前のことなのだが、この重要性に気づいたのだ。(中略)今でも私は面白いフレーズや単語を見つけると、ノートにメモし、繰り返し覚えるという方法をとっている。(猪口邦子『くにこism』西村書店、p44-47、適宜改行を行った。)
この単語帳を作って暗記したり、文章を何度も音読したり、フレーズを暗記するという勉強法は、国弘正雄氏、村松増美氏、蟹瀬誠一氏など多くの語学の達人が推奨する勉強法です。しかし、小学生の時に、自発的に目標設定を行い、そこから進んで、こんな勉強法を考え実行するとは本当に驚きます
そして現在でもこのやり方を続けていらっしゃるのですね。現在、衆議院議員をなさっている猪口氏ですが、彼女の軍縮会議(ジュネーブ)議長をはじめとする国際政治での活躍の下地は意外なところにあったようです。



















