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2009/10/26

花岡大学のすすめ

今日は、新刊『大人のための仏教童話 人生を見つめなおす10の物語』の中で取り上げた花岡大学(はなおか だいがく)のことについて、ちょこっとコメントします。

花岡大学は、仏教学者であり、作家であり、僧侶でもあった方ですが、仏典の中に記されている、ホンの小さな物語を換骨奪胎し、ほとんど花岡大学の創作と言っていいような形で、しかも子供が読めるようなわかりやすい表現で、童話をたくさん書いています。

童話なので、さらっと読めてしまいます。けれども、これは、一言では言い表せないほど、非常にたいへんな作業だったのではないかと思われるのです。

一例を挙げてみますと、花岡大学の作品の中でも傑作と思われる童話に、『アマリリスのような おんなの子』や『蟇仏(がまぼとけ)』といった作品があります。

『アマリリスのような おんなの子』は今回の私の本の中でも取り上げていますが、この箇所を執筆するにあたって、私は、この童話の原典である和綴じ本の経典『根本説一切有部毗奈耶雑事(こんぽんせついっさいうぶびなやざつじ) 巻第十六』を借りてきて、チェックしてみました。

Photo_2 左の画像がそれです。(和綴じ本をコピーしていますので、裏の文字が透けて見えています。ちなみに、アマリリスのような女の子の物語は、この画像の中ではなく、もう少し先に書かれています。)

さて、原典である漢文を読んでみると、花岡大学の童話には、いくつかの改変が施され、しかもそれが何とも言えない味わいを醸し出していることに気づきました。

たとえば、原典の中で描かれている女性が、童話の中ではアマリリスの花のような風貌をした少女となっていること。これは物語の中で非常に効果的だったと思います。

それから原典は、非常に短く、淡々と書かれているのに、童話の方では女の子の家に押し入る山賊のかしらの気持ちが細かく書かれていること。童話の方に加筆されている風景描写が物語を非常に生き生きしたものにしていること、などなど……。

花岡大学はこのごくごく小さな話を、あれほどの感動的な物語に作り上げたのか。そう思うと、その努力と情熱に対して、敬意を表したいと思うのです。

Hanaoka_3  

花岡大学の作品は、定価ではなかなか入手するのが難しくなっているのですが、『仏典童話全集』(法蔵館)や『花岡大学仏典童話』(ちくま文庫)などに収められている作品を、図書館などで読まれてみてはいかがでしょうか。

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