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2010/12/02

国会図書館に本を寄贈した話(下) 『釈氏之易』と今東光と井伏鱒二と

さて、私が国会図書館に寄贈した『釈氏之易』。

著者は紀藤元之助という方で、30ページほどのたいへん薄い本です。けれども、この薄い本の最初の数ページに文学史上、かなり貴重ではないかと思われる記載が、私が思うに、2つありました。

1つは今東光とのつきあいを描いた部分、もう1つは井伏鱒二の小説「吉凶うらなひ」との関連を示唆している部分です。

1つめ。今東光は、小説『お吟さま』で直木賞を受賞し、自伝的小説『悪名』が勝新太郎主演で映画化され大ヒットを記録した作家であり、天台宗の大僧正であり、晩年には参議院議員もつとめた変わり種ですが、彼が『今氏易学史』という本格的な易の歴史の研究書を書いていることはあまり知られていません。

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←こちらは私が持っている『今氏易学史』。今は、古書で、どひゃーっと叫んでしまうほど、値段が高くなっています。

今東光は、文壇で脚光を浴びるまで、たいへん貧乏だったらしいのです、そこで、易でもやれば、占ってもらいたいお客がやってくる。そうしたら、それで生活ができる。そう思って、自分の易を「天台易(てんだいえき)」と名づけ、家の門に「天台易」の看板を掲げていたらしいのです。

ちなみに、『今氏易学史』には、谷崎潤一郎が序文を寄せているのですが、その谷崎によると、佐藤春夫の奥さんが、「今さんの易はなかなかよく中(あた)るので、信者も相当に多い」と言っていたとのこと。

この時代の今東光と紀藤との関係が、国会図書館に寄贈した『釈氏之易』に書かれています。

次に、2つめの井伏鱒二の小説との関連について。

実は、著者の紀藤元之助は、井伏の小説「吉凶うらない」に登場する2人の易者のモデルだったらしいことが、『釈氏之易』に書かれていました。

これを読んだ私は、早速、井伏鱒二の小説「吉凶うらない」を読んでみました。

読んでみると、確かに小説の中に易者が2人登場します。1人は易の大先生、もう1人はその弟子にあたる人物。そして弟子にあたる易者が、どうも『釈氏之易』の著者であるらしい。

一方、その師匠である易の大家(加納大剛)のモデルは誰だったかというと、『易学大講座』などで有名な加藤大岳なのです。

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←こちらは、私が持っている『易学大講座』の表紙。全部で8巻あります。

要するに、井伏鱒二はかなり易に興味を持っていたらしいことがわかるのですが、井伏鱒二を易の観点から見た研究はされているでしょうか。こちらも、ちょっと気になりました。

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