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2012/04/24

人もイノシシも行動の時代?

今回はご恵送いただいた本を2冊ご紹介いたします。

いずれも共著なのですが、先ずは大隅直人・大隅書店代表から頂戴した新刊本、『これが応用哲学だ!』(大隅書店)から。

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なんといっても、この本、執筆者陣が豪華です。

私が存じ上げている方々のお名前を拾ってみただけでも、茂木健一郎氏、鷲田清一氏、野家啓一氏、森岡正博氏、三浦俊彦氏、戸田山和久氏、信原幸弘氏、服部裕幸氏、中岡成文氏と、その分野での著名人揃い。

ところで、応用倫理学という言葉は聞いたことがありましたが、「応用哲学」という言葉は初耳でした。

出口康夫氏によれば、18世紀後半に「純粋哲学」との対比で用いられていた言葉が、ここ30年ぐらいの間に復活したとのこと。そして日本でも、2008年に応用哲学会が設立されたそうです。

実は私、この「純粋哲学/応用哲学」の対立に象徴される、思想と行為、あるいは観照と実践の対立に以前から興味を持っておりまして、かつて「社会科学における『近代』(1)」(『お茶の水地理』41号所収)という論文を書いたことがあります。

その時の問題意識が何だったのかというと、近代において、思想よりも行為を優位におく考え方が全面に展開されるようになったのは何故か、この両者の対立は何を意味しているのかというものでした。

書中の対談では、昨年、3月11日の地震による災害を受けて、哲学がどのような役割を果たせるのかが、1つの課題として論じられていました。

今後、応用哲学どのような展開を見せるのか興味深いところですが、実践への関心の高まりのひとつなのでしょうか。

この4月21日と22日には、応用哲学会の第4回の研究大会が千葉大学で開催されたとのことです。

さて、2冊目にご紹介いたしますのは、首都大学東京教授・杉浦芳夫先生から頂きました『地域環境の地理学』(朝倉書店)です。

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これは杉浦先生編著の地理学の入門書的位置づけの本で、人間と環境の関係をテーマに編纂されています。

内容は、気候学、地形学、社会地理学、農村地理学、計量地理学、文化地理学など、それぞれの分野の紹介を兼ねた論文によって構成されており、杉浦先生は、明治28年の東京府におけるコレラ流行を計量地理学の見地から分析されております。

ところで、私的に驚いた論文がありました。それは、生物地理学に関する高橋春成氏の論考。

書中では、旧来の農村部で維持されてきた、動物と人間との関係が、都市型社会の成立によって、どのように変化したのかが、イノシシの生息圏などの資料を用いて説明されています。

勉強になったのは次のこと。

通常、人間の活動の活発化によって、自然が破壊され環境が変化した。その結果、クマやサルやシカやイノシシなどの野生の動物たちが、人の生活圏に出没するようになった。

そう考えがちなのですが、この私の常識が、くつがえされたことです。

自然破壊とはいっても、そういう一方的な話ではなく、過疎化による農村部や山間部での人の活動の低下が、山林の荒廃をまねいたり、動物の人間世界への侵入をもたらしている側面があるらしいのです。

なるほど 

要するに、人間と動物との新しい関係の構築が目下進行中ということなのでしょうか。

日本における都市型社会は、まだはじまって50年ほどしかたっていないのですから、この状況はしばらくは続くのだと思います。

イノシシの活動ひとつとってみても、ここ数千年来の人間の生活様式が転換点に直面していることは確かなようです。

それはさておき、イノシシが生息域を拡大させるべく、海を泳いで島々に渡っているという事実にはビックリしました。

著者によると、「海岸部での狩猟による追出し」が一因として考えられるということですが、それにしても、小豆島沖で撮られた、イノシシが海を泳いでいる写真には目を見張りました。

人が新しい都市型社会の生活様式のなかで四苦八苦しているように、イノシシも生き残りをかけて必死なのでしょうか。

掲載されているイノシシ君、なんと、7kmも泳いできたとのことです。

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