『袋草紙』をめぐって
最近、監修——つまりは自分以外の人の書いた文章の出典の間違いを発見する仕事——を多くこなしているため、どうも何かの本を引用した箇所を読んでいると、その引用がきちんとした出典に基づいているのかが、とっても気になってしまいます。
昨日も、ある言葉を調べていたら、2つの辞書の間で、異なる出典が書かれているのを見つけてしまいました。
具体的に言うと、『角川古語大辞典』には『袋草紙・上』と、小学館の『古語大辞典』には『袋草紙』巻四と書かれていたのです。
ちなみに、これを見た時、私は『角川古語大辞典』の方が正しいのではないかと思いました。
なぜかというと、『角川古語大辞典』は、かの書誌学の大家・谷沢永一が次のように評していたからです。
中村幸彦が先導して、角川書店の『角川古語大辞典』五巻が成った。日本の古典に心を寄せる者にとって杖ともなり柱ともなる。それまでにできた古語辞典はいちおう御破算である。
それで
、どっちが正しいか、確認したくなって矢も楯もたまらず、大学に行って『袋草紙』を確認してきました。
←この『袋草紙』は、森鷗外の蔵書である鷗外文庫のもので、なんと、貞享2(1685)年に刊行されています! 画像はその中の1ページです。
うひゃーと思いながら、パラパラと崩れそうになる表紙をそーっとめくりながら、当該箇所を探してみると、予想に反して、小学館版が正しいことがわかったのです。
『袋草紙』は上下ではなく、乾坤(けんこん。『易経』の最初に出てくる2つの卦)で分類されていて、「乾」には巻一と巻二が、「坤」には巻三と巻四が所収されていました。
なんということもない事実なのですが、私にとってはかなり勉強になりました。とにかく、原典にあたらないとダメだなぁ、と痛感した次第です。
ただし、上下で分類されている『袋草紙』はないと、断定もできません。『角川古語大辞典』は何を出典にしたのか? それとも単なる記載ミスなのか?
さらなる疑問がわきますが、深入りしそうなので、このくらいにしとこっと。
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