へるめす通信43
—(村人A)はーい、じゃ、考えてみまーす。えっと、しらばっくれていながら、噓じゃない言い訳。しらばってくれていながら、噓じゃない言い訳、っと……。
え? それって、矛盾してるじゃないですか?
—(ジョルジュの孫)おー、なかなかいいところに気づいたじゃない! どういう矛盾なのよ?
—(村人A)だって、しらばっくれるということは、ヘルメスは噓をついているってことですよね。
—(ジョルジュの孫)そう、そう。
—(村人A)噓をついているのに、噓じゃない。それって、矛盾じゃないですか。
—(ジョルジュの孫)いいところに気づいたじゃない。
—(村人A)そこなんですよ。あっしは、こんなふうに、いつもすこーし考えるだけで、コトの本質を突いてしまうんですよ。この前も、……。
—(ジョルジュの孫)うるさーい。あんたのそのダラダラ話はもう、いい! 不要!! 却下!!! シャラーップ!!!!
—(村人A)ひどーい。
—(ジョルジュの孫)いいから。それで具体的にはどういう言い訳だと思うのさ。矛盾が成立している言い訳って。
—(村人A)えーっと、うーっと、んー、噓をついているのに噓じゃない言い訳、ですよね。つまり、ヘルメスは牛を盗んだ。それは事実ですよね?
—(ジョルジュの孫)そう。
—(村人A)だけど、牛を盗んじゃいませんといって、それが噓にならないってことですよね? そんな言い訳って、あり?
—(ジョルジュの孫)あるのよね。で、なんて言ったのさ。わかんないの? 考えつかないの? 教えてほしいか? そらそら。
—(村人A)悪魔!
—(ジョルジュの孫)にひゃ、ひゃ、ひゃ。楽しいな、ったら。あのね、キリスト教世界でいう悪魔ってのはね、民間伝承の神々や妖精たちのことなのよ。もともとの土着の信仰の神々が、キリスト教の布教にともなって、次第にキリスト教的な神と相対する悪魔となっていったのよ。つまりだ、私は妖精なのね、あなたにとって。うふ。
—(村人A)性格わるーい。おめでたすぎー。しんじらんなーい。
—(ジョルジュの孫)あんたって、いじめ甲斐があるゥ。
ま、いいや。あのね、ヘルメスはね、こう言ったのよ。「僕は牛を自分の家には連れて来てないもん。本当だもん」、って。
—(村人A)はい? 「牛を自分の家には連れてきてない?」
—(ジョルジュの孫)そうなのよ。そして、それは本当なの。



















