ピーター・シェーファーの『エクウス(馬)』
ハリー・ポッター役で有名な、ダニエル・ラドクリフが数年前、『エクウス(馬)』という舞台で全裸になったことが話題となりました。
先日、そのダニエル・ラドクリフが出演した戯曲『エクウス(馬)』を、劇団四季の舞台で観てきました。
しかし、鑑賞するかどうかの決め手となったのは、ダニエル・ラドクリフのファンだったからというわけではなくて、映画『アマデウス』を書いたピーター・シェーファーの戯曲だったこと。
『アマデウス』は、私としては、「記憶に残る映画10本」に入れたいと思うほどの名作だったので、シェーファーが他にどんな作品を書いているのか知りたかったのです。
そこで、問答無用で見に行ってきました。
『エウクス(馬)』の主人公は、6頭の馬の目をくりぬいた少年。
この少年が、ある精神科医のもとにやってきて、精神分析の治療を受けるという設定のもとに、観客は精神科医とともに、彼の経験をたどっていくのです。
「キリスト教の信仰心のある母親」と、そのような信仰を否定する父親。そこに、ギリシャ神話的なイメージをもつ馬が介入してきて、それらの関係に精神的に動揺する主人公という図式が成り立ちそうだなとは思いましたが、筋としては、すっきりしない印象。
ただし、古代宗教とキリスト教との対立が背景にあるような気がしました。
それから、今、精神分析学を授業で話しており、また私自身、自分の精神分析を何度も行っていることもあって、正直、シェーファーによる主人公の精神分析の過程も描き方が、若干弱い感じを受けました。
しかし、舞台は、昭明の見事さと、劇団四季の俳優陣の身体技能の優秀さなどもあいまって、なんらかの感銘を受けたようです。
自宅に帰ってから、シェーファーの別の作品『ザ・ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン』(なんと、映画監督の故 伊丹十三の翻訳)を読んでしまいました。
この戯曲は、黄金のインカ帝国が、スペイン人に侵略され、滅ぼされていく過程で、スペイン人の信仰するキリスト教と、インカの人々の太陽神信仰との対立が鮮明に浮き上がってくるしかけになっています。
この本を読んで、改めて、シェーファーの関心のひとつは、古代宗教とキリスト教との対立なのではないかと思った次第です。
それから、この戯曲も、いったん読み始めたら、先が気になってとまらないものでした。
これもシェーファーの力量のうちなのでしょう。
そういえば、シェーファーは、今から約1ヶ月前の2016年6月6日に亡くなられています。御冥福をお祈りいたします。
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