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2021/05/09

死にゆく母を、歌に詠む

以前、当ブログの「海を見て、亡き人をしのぶ」にて、「亡(なき)母や 海見る度(たび)に 見る度(たび)に」という一茶の句を紹介しました。

今回は、この一茶の句からの連想で、死にゆく母を詠んだ歌を紹介したいと思います。

 

死にゆく母を詠んだ有名な歌人といえば、斎藤茂吉。

大正2(1913)年に出された『赤光』には、私も教科書で読んだこともある、以下の有名な二つの歌が掲載されています。

 

 「死に近き 母に添寝(そひね)の しんしんと 遠田(とほだ)のかはづ 天(てん)に聞(きこ)ゆる」

 

 「のど赤き 玄鳥(つばくらめ)ふたつ 屋梁(はり)にゐて 足乳根(たらちね)の母は 死にたまふなり」

 

さて、上記の二首もとてもいいのですが、今回、歌集を読んでみると、私の知らなかった以下の歌に、死にむかっている母に対する茂吉の思いがよくあらわれているようで、胸に迫るものを感じました。

 

 「我(わ)が母よ 死にたまひゆく 我(わ)が母よ 我(わ)を生(う)まし乳足(ちた)らひし母よ」

 

とくに上の句(冒頭の17音)には、雷で打たれたような感動を覚えました。

どんな人も避けてとおることのできない愛する人との別れのつらさ、これまで育ててきてくれた母親への感謝の念など、さまざまな感情を、母への呼びかけの繰り返しによって見事に表現しています。

ちなみに、俳句や短歌というのは、黙読よりも、音読の方が歌の意味や読み手の感情がよく伝わってくるのも、不思議なところです。

 

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