生のいぶき
これまでかなり長く斎藤茂吉の歌を紹介してきました。
今回からは、少し趣向を変えて、与謝蕪村(よさ ぶそん)の俳句です。
蕪村というと、とても有名な、以下のような俳句が思い浮かぶかもしれません。
春の海 終日(ひねもす)のたりのたりかな
なの花や 月は東に 日は西に
さみだれや 大河を前に家二軒
月天心(てんしん) 貧しき町を通りけり
(「月が天心に高く照る夜半、貧しい町を通り過ぎたなあ。」玉城司氏による口語訳)
蕪村の句はよく絵画的といわれますが、上記の句を読むと、確かに風景が目に前にありありと浮かんできます。
そこで、まずは上記の句のように絵画的であり、さらに生と死が対照的に扱われているように思われる句から紹介を始めたいと思います。
愁(うれ)ひつゝ 岡にのぼれば花いばら
(「親しい人が亡くなった。愁いを抱いて、岡に上ると花茨が咲いている。」玉城司氏による口語訳に、筆者の説明を追記している。
与謝蕪村、玉城司訳注『蕪村句集』角川ソフィア文庫、p209)
水仙や 寒き都のこゝかしこ
(「水仙が咲いているよ。寒い都のあちらこちら」玉城司氏による口語訳。
与謝蕪村、玉城司訳注『蕪村句集』角川ソフィア文庫、p361)
なんだか、いいですね。
灰色の世界にあって白や黄色の色を見つけたことで、行き詰まりの中にあっても、次々と小さな希望を見つけ出していくような、そんな感じがします。