へるめす通信51
—(ジョルジュの孫)で、ここのところが不思議といえば不思議なんだけど、アポロンがヘルメスに与えるものをヘルメスに伝える前に、ヘルメスの方から、アポロンに向かって、自分のつくった竪琴をあげましょう、って言うのよね。その代わりに、アポロンの牛をちょうだいって、ね。
—(村人A)うは! ちゃっかりしてる!! さすが。
—(ジョルジュの孫)「ちょうだい」というか、正確にはこう。「竪琴はあなた、すなわちアポロン様に差し上げます。僕の方では、牛にエサを与えます」ってね。
—(村人A)ぷぷっ。それって、ぶっちゃけ、「牛をくれ」ってことですよね。
—(ジョルジュの孫)そうそう。
—(村人A)なるほど、うまい言い方だな。
—(ジョルジュの孫)それだけじゃないのよね。ヘルメスはアポロンにこう付け加えるのを忘れないの。「きっと、牡牛と牝牛が、子供の牛をたくさん作ってくれますよ。だけど、アポロン様、自分の方が儲けが少ないって、怒らないでくださいね」ってね。アポロンに、念を押してるのよ。
—(村人A)うはー、さすがすぎる。それで、どうなったんですか。
—(ジョルジュの孫)それで、ヘルメスはアポロンに竪琴を差し出し、アポロンはヘルメスに、牛追いの鞭を差し出し、お互いに受け取ったというわけ。
—(村人A)なるほどねー。つまり、お互いがお互いの持ち物を交換しあった、という……
—(ジョルジュの孫)そこよ!!
—(村人A)はい? なんすか、いきなり、びっくりするなあ、もう!
—(ジョルジュの孫)そこなのよ!
—(村人A)はい? もしもーし、大丈夫っすかあ? なんか、「そこ」「そこ」言ってるけど、あっしにはさっぱり意味不明。
—(ジョルジュの孫)だーかーらー、そこ、そこ、それなのよ!! やっぱり、先生が良いと、ホントに生徒の力の伸びが違うわね。自分で自分を誉めたいわ!
—(村人A)だーかーらー、意味不明だって言ってるんすよ。何が「そこ」で、何が「誉めたい」んだか、ちっともわかりまへん、ってば。いたいけな生徒が質問しているんですから、あーたも、へっぽことはいえ、教師として応えなさいってば。
—(ジョルジュの孫)うーん、あんた、いいこと言うわね。そこなのよ、「交換」なのよ、「交換」。
—(村人A)はい? まったく、もう。何が何だか、さっぱり……。
—(ジョルジュの孫)だから、つまり……。